6月28日、川崎市内の介護や障がい者福祉の事業者(経営者)有志の集まりである「川崎市福祉サービス協議会」が主催する『川崎市健康福祉局との意見交換会』が川崎日航ホテル会議室とZOOM(オンライン会議)の併用で開催されました。
川崎市からは、健康福祉局長寿社会部の下浦健部長が出席しました。
私は会員ではありまでんが、誰でも参加できるとのことで案内のがあり、同協会主催のイベントに初めて参加してきました。
業務中の時間帯の開催であったため、ZOOMで参加しました。
事前に質問を募集しているとのことで、私は以下の4点を文書(メール)で主催者側に提出しました。
3年に1回の介護保険制度の改定が、令和3年もおこなわれ、今回も詳細が直前までわからず、「LIFEって具体的にはどんなものなのか」など情報が不足しており、追加のQ&Aも何度もだされ弊社の現場は大混乱でした。
私は介護事業に関わって12年ですが、3年ごとに同じような混乱が起きています。
私たち現場の経営者は、能力の高い公務員のみなさまと違い、制度改正について多量の文書が発表されても一度読んだぐらいでは理解できず、制度改正の内容理解のために一定の時間が必要です。理解してうえで、加算などへの対応を経営判断して、それを従業員に伝え、ご利用者様から同意を得るための文書をつくり、ご利用者様やご家族様から同意を得るために、かなりの時間がかります。
制度を改正するのであれば、少なくとも2ヶ月前には、内容が詳細まで確定していることが必須ではないでしょうか。
民間企業同士の契約では、施行日の直前まで内容が決まらないなどということはありえません。
期限に間に合わなければ、改正は延期するか見送るのが普通のルールです。
川崎市として、3年に一度の制度改正時に、直前まで内容が決まらない、直前まで正式発表がないことは問題だと認識していますか。
それとも、問題がない、現場は困っていないという認識でしょうか。
問題だと思っているのであれば、その旨を厚生労働省に抗議・意思表明していますか?
(2)最低賃金の引上げ、物価上昇と介護報酬について質問します。
神奈川県の最低賃金は、2008年には「766円」(時給)でしたが、2020年には「1012円」と、12年間で、人件費は3割以上、上昇しています。
介護業界では、通常の職種よりも採用が困難であり、採用コストも増大しています。
ところが、通所介護の場合、介護報酬の単価が、人件費や物価が増大しているにもかかわらず、12年前と比べると引き下げられています。
安心して介護事業を経営していくうえで、仮に国家の財政が厳しいとしても、最低賃金をはじめとする人件費の上昇、および、物価上昇分は最低でも連動して介護報酬があがっていく仕組みでないと、安心して経営ができません。
将来が不安になります。 最低賃金の引上げ、物価上昇と介護報酬について、局長の見解をおしめしください。
また、令和3年の改正で、デイサービスにおいて入浴するご利用者様への加算が「50単位」から「40単位」に20%も削減されました。12年前からずっと「50単位」でした。
この12年間で、人件費が上昇して、水道代やガス代も上昇しているなかで、この引き下げの根拠についてご説明ください。
(3)要介護1・2を介護保険から総合事業に移行すること、および、自己負担原則2割負担化の計画について
令和6年度の制度改正で、 自己負担原則2割負担化の実施、通所介護などの分野で 要介護1・2を介護保険から総合事業に移行することが検討されていると報道されています。
これは、経営的に介護事業者の存亡にかかわる大問題です。ご利用者様、ご家族様にとっても必要なサービスも経済的理由で利用を減らすことになりかねません。
そこで、早い時期に厚生労働者の担当者を呼び、川崎市の主催で、介護事業者や市民が誰でも参加できる「 要介護1・2を介護保険から総合事業に移行すること、および、自己負担原則2割負担化」をテーマにした意見交換会を開催すべきではないでしょうか。
介護事業の根幹に関わる問題が決定してから一方的に内容を伝達されても困ります。民主主義社会である日本において、介護の現場の声を反映した制度改正となるよう川崎市が積極的な役割を果たすことを期待しています。
(4)全ての介護事業所に3年の猶予期間はあるもののBCP(事業継続計画)の策定が義務付けられました。感染症や自然災害における対策を形だけでなく実効性のあるものにするためには、計画策定のために人員、会議、予算が必要になります。行政においても、行政に関わる計画を作成するときには予算が組まれ、人員が配置され、専門家にもお金を払い助言を得て、行政における各種計画は作られていると思います。ところが、介護事業者には、新しく重い負担となる計画の策定が義務づけられましたが、それに対する対価の支払い、報酬がないという現状があります。民間企業と民間企業の間の契約においては追加で仕事を依頼すれば、その分のコストを依頼主が支払うことは当然です。介護事業では、なぜ新しい仕事が介護事業者に増えるにもかかわらず、その報酬が支払われないのか、資本主義社会の原理に照らしておかしなことだと思いますが、ご説明ください。
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下浦健部長からは、『コロナ禍の中で、行政が在宅介護サービス事業者に求めたいこと』と題して講演がありました。
1年も前の、まだ新型コロナウイルス問題が起き始めた初期の調査データを使い、何が言いたいのかわからない講演でした。
しかも、意見交換会であり、一方的に話す場ではないにもかかわらず、4時閉会予定の場で、4時直前まで一方的に講演を続けて、まったく場の空気の読めない仕事のできない公務員でした。
私の上記の質問は、締切日である6月18日に提出しました。
『川崎市健康福祉局との意見交換会』は6月28日(月)に開催されましたので、川崎市としては事前に質問をよく読み、回答を準備する時間がありました。
ところが、驚いたことに、当初の時間配分を無視して、下浦健部長は一方的に話を続け、閉会予定時刻の16時近くまで講演をしました。そして、主催者側が事前に渡した事前質問はよく読んでおらず、回答を用意していなかったようで、時間の関係で全ての質問には答えられないというようなことを言い、私の質問に関連する話題は口にしましたが、質問に正面から回答するものではありませんでした。質問を理解する読解力がないのでしょうか。。
たいへん、がっかりしました。
川崎市の介護保険の担当者が、現場の声に向き合う気がないのかと思ってしまうほど、残念な対応でした。
また、せっかくの川崎市との意見交換でありながら、参加している介護事業者側からの質問も、あたりさわりのないものが多く、本来であれば制度改正について、もっと鋭い切込みがあってもよかったと思います。
ただ、私の質問は、オンラインで参加した人へも、会場参加の方にも、紙で配布されましたので、今後のことを考えると、参加した意義はあったと思います。
介護事業者側は、制度が悪くなると予告されていても、それに反対せず、どう対応するか、どう利益を確保するために対策するかという方向にばかり動きがちです。しかし、民主主義の社会において、官僚からの上意下達の運営では、介護保険制度をより良いものにすることはできません。現場の声を官僚に届けてこそ、より制度改正がおこなわれ、よりよい介護保険制度となってきます。
介護事業者、介護労働者はもっと声をあげるべきであり、厚生労働省や川崎市は声を聴く場を設けるべきです。